下町を出られない娘

その娘、上京してすぐ下町に住む
その娘、すっかり下町に馴染む
娘は言う
やっぱ、下町から出られんのよね
仲の良い友達はみんなもっと栄えたところに住んでいる
唯一、おんなじ方面に住んでいる男友達ももうすぐそちらへ引っ越してしまう
娘は少々、そいつが好きだったんだと思う
それでも言う
やっぱ、下町から出られんのよね
涙ぐみながら言うそれは
説得力の欠片もなかった